「サワロサボテンは、アリゾナの景色の一部ではない。
アリゾナという景色を成立させている主役のひとつだ。」
サワロサボテンは、
ただの植物ではない。
はじめてアリゾナへ来た人は、空の青さや赤い岩に驚く。けれどしばらくすると、 だんだん視線はサワロサボテンへ引かれていく。一本一本が驚くほど大きく、 しかもどこか人のように立っているからだ。腕を上げているように見えるものもあれば、 まっすぐ静かに立つものもある。風景の中にありながら、風景の背景にはならない。 サワロは、それだけでひとつの存在感を持っている。
しかもこの植物は、見た目の面白さだけでは終わらない。育つのに非常に長い時間がかかり、 花を咲かせ、実をつけ、鳥や小動物に場所と食べ物を与え、砂漠の生態系そのものを支えている。 つまりサワロは、アリゾナの“象徴”であるだけでなく、アリゾナの自然そのものの中心線でもある。
日本人旅行者がサワロに強く惹かれるのも、よくわかる。かわいいわけではない。派手でもない。 でも、長く生きているものの静かな品格がある。乾いた大地に根を張り、何十年、何百年という時間をかけて ただ立っている。その姿には、見ている人の気持ちを少し静かにする力がある。