「砂漠を見た、というより、
“空の下で物がどう立つか”を初めて見た感じがした。」
最初に見た砂漠は、
空白ではなく、
静かな密度を持っていた。
ヒロがアリゾナの砂漠を最初に見たとき、思わず黙ってしまったのは、その広さのせいだけではなかった。広いのに、薄くなかったからだ。むしろ逆で、景色の一つひとつが妙にはっきりしていた。サボテンの立ち方、低い茂みの影、遠くの山の線、乾いた地面に落ちる夕方の光。何もないと思っていた場所に、こんなにも“見えるもの”があるとは思っていなかった。
砂漠は、最初の印象だけだと抽象的に見える。茶色い。乾いている。暑そう。そういう言葉でまとめてしまいそうになる。でも実際に立つと、砂漠はとても具体的だ。どこに何が生えているか、光がどこに当たり、どこが冷たい影になるか、空がどれくらい大きいか、その全部がはっきりしている。ヒロはたぶん、その“はっきりしている感じ”に最初に打たれたのだと思う。